岩間裕司のページ

研究の関心

看護師の不安は、制御できる。

― メタ認知による不安調整

不安を排除しようとするのではなく、思考によって調整する。
その視点が、看護師の学びを深め、不安を成長のきっかけへと変える。

看護の現場に不安はつきものだ。しかし「不安があること」と「不安に影響をうけること」は、まったく異なる。

メタ認知による不安調整とは、自分の思考プロセスを観察し、不安を判断のリソースへと組み替え、学習を積み上げていくプロセスを指す。

看護教育において、不安を起点とした学びの視点が、臨床実践の質を高める可能性を持つと考えている。

不安をリソースへ

概念の定義

メタ認知による不安調整とは?

看護師が臨床場面の不安に対し、自身の思考プロセスを観察・調整することで、より良い判断と学習につなげるプロセスのことをいいます。

熟達した看護師の思考から見えてきたもの

4ステップモデル

不安に直面したとき、思考はどのように動くのか。
熟達した看護師の実践から見えてきた、4つの流れを示す。

  1. Step 1不安に気づく

    臨床場面において、身体的・心理的な不安を感知する。
    不安は経験を重ねたベテランでも感じる。それ自体悪いことではない。

  2. Step 2立ち止まる

    とっさに反応せず、一度立ち止まって自分が何を感じているのかを考える。
    ここが、不安に流されるかどうかの分かれ道。
    立ち止まれないと、回避や反射的な判断につながりやすい。

  3. Step 33つの視点で見直す(自分が何を考えているのかを考える)

    立ち止まったところで、つぎの3つの視点で自分の状況を観察する。

    • 状況:いま、何が起きている(と思っている)か
    • 自分の傾向:自分は何を恐れ、何に反応しやすいか
    • 対応方針:この場面で、自分はどうしようとしているか

    この3点を分けて見ることで、不安が生じるなんとなくの思考が操作可能になる。

  4. Step 4判断を選び直す

    見直した結果をもとに、次の行動を選び直す。
    これは「正解を出す」ことではなく、「反射ではなく意図的な選択として動く」ことである。
    この経験の積み重ねが、次の臨床場面への学習となる。

よくある疑問

Q1. メタ認知による不安調整とは、一言でいうと何?

不安を感じたとき、一度立ち止まって自分の思考を見直し、判断を選び直すこと。
不安にとっさに反応したり、排除するのではなく、適切な判断や学習の積み上げにつながる。

Q2. レジリエンスやマインドフルネスとどう違う?

レジリエンスは衝撃を受けた後の回復、マインドフルネスは事後的な不安の解消に焦点がある。
メタ認知による不安調整は、不安を感じた「その瞬間」に思考を見直し、次の行動を意図的に選ぶことに焦点を当てる。
不安を思考によって調整し、その不安経験から学びを積み上げ、次のよりよい実践につなげることができる。

Q3. これは経験豊富な看護師だけに有効か?

そうではなく、熟達した看護師の思考の流れを「学びうる過程」として示すことがこの概念の目的の一つ。
新人看護師であっても、立ち止まる・見直す・選び直すという流れを意識することで、臨床経験の積み上げ方が変わる可能性がある。

Q4. 看護教育のどのような場面で活用できるか?

実習指導・事例分析・カンファレンスなど、経験を振り返る場面での活用が一例として考えられる。
「なぜそうしたのか」と評価するのではなく、「そのとき何を目指していたか」「何が難しかったか」と問い直すことで、学習者が自分の思考に気づくきっかけをつくれると考えている。

Q5. 看護師のメンタルヘルスへの支援として使えるか?

直接的なメンタルヘルスケアを目的とした概念ではない。
ただし、不安に飲み込まれずに思考を整える力を育てることは、結果として感情的消耗の軽減につながる可能性がある。